9.23伝令デー記念:ギリシャ神話妄想語りイリスによるヘルメスしごき〜アポロン集団リンチ事件


――「『虹』は海とさえ交渉し、恵みの雨と風を連れてくる」。 
 
……商業・盗人の神にして伝令神・ヘルメスが生まれるずっと以前より、 
ギリシャの天界には一人の偉大な伝令がいたのだった―― 
 
そう、「海とさえ交渉し、恵みの雨風を連れてくる」と謳われし伝説の伝令……虹の女神イリスが! 
 
 
 
――ということで、ずいぶん前の話になりますが、 
9月23日はギリシャでは
伝令デーだったということで(詳しくは後述)、 
 
今日は心行くまで語らせてもらいたい…ギリシャ神話の二人の伝令の話を!! 
今こそ語ろう! 
生まれて間もなきヘルメスが、いかにして天界の第一の伝令の座を彼女から託されたのかを!!
 
 
 
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ヘルメス「…はぁッ、はぁ…っ、よしっ、巻いたか…っ!?こ、ここまで逃げれば、さすがにあの女も追いつけないはず…っ!!」 
 
 
アポロン「…ややっ!?そこにいるのは我が親友・ヘルメスではないか!?ははは、奇遇だな!私だ、輝けるアポローンだ!!昨日お前から貰ったこの竪琴だが、すっかり私の腕にフィットして…」 
 
ヘルメス「うるさいッ!!誰かと思えばまたあんたですか!!静かにして下さい、に見つかりますッ!!」 
 
 
アポロン「…こ、この輝けるアポローンに対してその横柄な物言い…まさか…たった一日で最高神まで登りつめたというのか、ヘルメスよ…?」 
 
ヘルメス「最高神どころか僕、まだリクルート中のペーペーですから!…だからこそ今大変な事に……ああ、もうそんな事いいから僕をかくまって下さい!!」 
 
アポロン「かくまう?誰から?」 
 
ヘルメス「イリスからです!!あのナマハゲと魔女を足して2で割ってないような女からです!!」 
 
アポロン「…さっぱり事情が飲み込めぬのだが…」 
 
 
ヘルメス「ああっもーこの際、あの女から身を隠せるなら、あなたのマントの下でもいい!!マントの中入れて下さいッ!!」 
 
 
アポロン「え!?ちょ、ちょっと…ヘルメス、うわ、くすぐったいだろ!!どこ触ってる!?私、マントの下素肌だから!もっと優しく……」 
 
 
 
虹の女神イリス「…これはこれは遠矢の若君(=アポロン)。ご機嫌うるわしゅう。」 
 
 
アポロン「!!」 
 
ヘルメス(で、出たぁぁーーーーッ!イリスー〜!!;)←アポロンのマントの下。 
 
 
アポロン「…ご、ごきんげんよう、驚嘆の神タウマスの足速き娘御、虹のイリスよ。私に何か用でも?」 
 
イリス「いえ、私は貴方ではなく、ヘルメスに用があるのです。…出していただけますか。」 
 
アポロン「ヘ、ヘルメス?さて…今日は姿を見ていないがな。」 
 
 
イリス
「…では、貴方のそのマントの下のふくらみは一体何なのですか。」 
 
 
アポロン
「…………男根だ。」 
 
 
イリス「………」 
 
アポロン「………」 
 
 
イリス「……見損ないましたよ、ヘルメス…!遠矢の君にこんなうすら寝ぼけた嘘までつかせて!!
あなたは私と共に来るよりも、男根として生きる人生を選ぶと。そういう事なのですか!?」 
 
ヘルメス「……ちょっと待って下さい誤解です!違います!!断じて違います!!そんなのになるくらいなら潔く出て行って死にます!!」 
 
アポロン「何だ、この輝けるアポロンの男根になる事の何が不満だ!?せっかく庇ってやったのに…」 
 
 
ヘルメス「…やっと逃げ切れたと思ったんですがね…イリス…!!」 
 
イリス「オリンポス一の私の俊足から逃げられるなどとは思わない事です、ヘルメス坊や。」 
 
ヘルメス「…この際ですからはっきり言います。いい加減僕を追い回すのはやめて頂きたい!」 
 
イリス「あなたこそ逃げ回るのは止めたらどう。だいたい、なぜ私から逃げるのです。」 
 
 
ヘルメス「そりゃ、背後からクロロフォルムを嗅がされて拉致された挙句、『あなたには将来、立派な伝令神になって頂くため、今から私の特訓を受けてもらいます。』じゃ逃げるに決まってるでしょう!!?」 
 
イリス「いいえ、あなたは立派な伝令神になる定め。私が手とり足とり指導してあげます。さあ、私と一緒に帰りますよ!」 
 
ヘルメス「嫌です!!絶対に嫌です!!僕は伝令神なんかになりたくない!ア、アポロン!!助けて下さい!!」 
 
 
イリス「修行が足りませんよ、ヘルメス。伝令たるもの、どんな苦境でも誰かの助けを求めてはなりません。借りを作れば、その相手との交渉が不利になるという事なのです。」 
 
ヘルメス
「だから僕は伝令にはなりませんって!!」 
 
 
 
アポロン「――なるほど。秩序の神たるこのアポロン、ようやく事情が飲み込めたわ。
イリスはヘルメスを伝令神にしたい、ヘルメスはなりたくない、と。そういう話か。」 
 
イリス「ええ…」 
 
 
アポロン「しかしヘルメス、どうして嫌なのだ?父上もお前には伝令神としての働きを期待しておられたぞ。」 
 
ヘルメス「嫌ですよ…!伝令神なんて!!
僕は商業と泥棒の神になるんです!!」 
 
アポロン「いやその二つはどう考えても両立しないと思うんだが…」 
 
 
ヘルメス「そして将来はビル・ゲイツが土下座して謝るくらいの大金持ちになるのが僕の夢なんです!!」 
 
イリス「そんな下らない夢は今すぐお捨てなさい!!貴方は伝令神になるんです!!」 
 
ヘルメス「いや、絶対ビル・ゲイツです!!」 
 
イリス「伝令神!!」 
 
ヘルメス「ビル・ゲイツ!!」 
 
アポロン
「私の男根!!」 
 
 
ヘルメス「あんた入ってこないで下さいっ!ややこしくなるから!!」 
 
 
 
イリス「――ああ、遥か未来を見遥かす遠矢の君よ、貴方の神託でこの子の未来を見てやって下さい!
ヘルメスの将来は立派な伝令神ですよね?」 
 
アポロン「……う〜ん…そうだな…。
『ヘルメスは偉大な伝令神になる。』…そういう未来が視える。 
 
…でもビル・ゲイツが土下座してる画も視えるな…
…伝令・商業・泥棒、全部の神になるんじゃないか、ヘルメスは?」 
 
 
ヘルメス「労働基準法が機能してないんですか、この国は!!?そんな重労働、無理に決まってるでしょ!?ほんと伝令神だけは勘弁して下さいよ!!」 
 
イリス「どうしてそうも嫌がるのです。」 
 
 
ヘルメス「だって伝令なんて、汗だくで走りまわってこき使われて報酬はお駄賃程度!…方や、神託の神のアポロンなんかは快適な神殿から一歩も出ずにウシ百頭がささげられるまではダンマリ決め込める…!!こんな時給の差じゃ嫌に決まってます!」 
 




イリス「…何を言うのです、ヘルメス。遠矢の若君といえど、デルフォイの神託の神として認められるまではそれはそれはご苦労なさったのですよ。そうですわよね、遠矢の若君?」 
 
アポロン「ああ。
今こそ語ってやろうか、私が女3人から受けたおぞましい集団リンチ事件を? 
 
…『神託の神』は私の前に、大地母神ガイア、夜の女神ニュクス、掟の女神テミスと三人の女神がいたからな……。イリス一人のお前はまだいい方だ。私なんか3対1だぞ、3対1!! 
 
柱にがんじがらめに縛りつけられて
『アポロン坊や、お前に本当に未来を視る力があると言うのなら、今から繰り出すパンチ避けてみろ』ボコーーッ!!だったんだぞ!? 
 
……今思い出しても震えが走るわ… 
父上が助けて下さらなかったら鼻骨折られるくらいじゃ済まなかった!!」 
 (※半分くらい実話。) 
 
 
 
ヘルメス「なるほど…やはり高収入な仕事というのは、資格取るのが難しいのですね…。うーん…」 
 
イリス「そうです。このご時世、仕事があるだけでも幸せと思って、大人しく伝令神におなりなさい。いいですね?」 
 
ヘルメス「そうしまs………って、危なかった…!!今、一瞬あなたの説得でぐらつきかけましたよ…!!まさかアポロンをけし掛けてくるとは…さすが天界一のイリスの交渉術…!!
立ってる者はアポロンでも使え、と!そういうわけですか!!」 
 
 
イリス「さすがは私が見込んだ者。なかなか落ちませんね。…では手を変えて、伝令という仕事の素晴らしさをお教えしましょう。確かに低収入ではありますが、その分やりがいのある仕事で…」 
 
ヘルメス「どう聞いてもブラックな匂いしかして来ないんですが…」 
 
イリス「…忙しいのは確かです。しかし、その分人とのつながりを実感できます。私はこの仕事が大好きで…」 
 
ヘルメス「僕は嫌です!!僕はそんな誰でもできる使いっ走りにはなりたくないし!!そんな一銭にもならない汚れ仕事はしたくない!!僕は…」 
 
 
イリス「黙らっしゃい!!それ以上伝令の仕事を侮辱するのは許しませんよ!!」 
 
ヘルメス「!!」 
 
イリス「貴方は伝令をただの使いっ走りの伝言係か何かだと思っているんじゃないでしょうね!?」 
 
ヘルメス「え…」 
 
イリス「伝令の仕事は、一国に例えれば外務大臣。我々の交渉が失敗すれば戦が起り大勢の犠牲が出る。言葉一つ誤まれば、敵陣の真っただ中で一人で死ななければならない。 
 
私は報酬のために駈けた事など一度もない。平和のために走るのです。 
――伝令とはそういう誇り高い仕事です。
足速く、機知ある者にしかできない仕事。 
 
 
ヘルメス「……でも、なぜ僕が必要なんですか…?天界の伝令は貴女一人で十分でしょう?」 
 
イリス「私のような古い神々の時代は終わった。これからはあなた方若い神の力が必要です。」 
 
 
ヘルメス「……でも…でも、僕なんかじゃとても貴女の代わりはできません…!!
『虹の女神は海とも交渉し、恵みの雨を連れてくる』僕にそんな芸当ができるとお思いですか…!?」 
 
 
イリス「その答えなら、若き神託の神が一番よくご存じのはず、」 
 
 
アポロン「…『ヘルメスは偉大な伝令神になる。 
      死と交渉し冥界から魂をも連れ帰る、 
      偉大な伝令に!』
。」
 
 
 
ヘルメス「…!!」 
 
イリス「分かったら、さあ、戻りましょう。貴方にはこれから覚えて頂かなければならない事がたくさんあります。」 
 
ヘルメス「……」 
 
イリス「…怒ってしまってごめんなさいね。まだ生まれたばかりの子にきつい事を言ってしまったわ。」 
 
ヘルメス「…あの…、その子供扱いみたいなの、やめてもらえます?僕、もう大人です。」 
 
イリス「あらあら。じゃあ私を越える日が来たら、その時は伝令同士、ライバルとして…いえ、良き友としてやっていきましょうね。」 
 
 
ヘルメス「ライバル?良き友?…冗談はやめて頂きたい。
男と女の間に恋愛感情以外の物があるはずないでしょう。僕があなたを越えた暁には、ベッドを共にして頂くのでそのつもりで。」 
 
 
イリス「…まあ…最近の子供はずいぶんおマセなのね」 
 
アポロン「ああ…私がお前くらいの頃は、鼻たらして棒ヒュンヒュン振り回してたぞ。好きな子にラブレターも贈れないシャイネス・ボーイだったわ…末恐ろしい…」 
 
 
 
ヘルメス「…で、僕が立派な伝令神になったらベッドを共にする、と。そういう約束でいいんですね、イリス?」 
 
イリス「いいでしょう。だけどこれだけは覚えておいて下さい。――私、自分より足の遅い男は嫌いです。…さあ、オリンポスまで走りますよ!付いていらっしゃい、ヘルメス!」 
 
ヘルメス「はい先輩ッ!!」 
 
イリス「声出してきますよーっ!!『♪ぼーくらは偉大な伝令神ー!』はいっ!!」 
 
ヘルメス『♪ぼっくらは偉っ大なでんれいしーん!!』 
 
イリス「声小さーいっ!!」 
 
ヘルメス「野球部の合宿の一年生しごきですかこれは!!?…『…ぼっっくらはいっだいな伝令しーーんッッ!!』 
 
 
アポロン
(いいなあ…青春できて……。私の時は鼻からスパゲッティ食わされたりしたのに…。) 
 
 
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―――なんていう会話があったかどうかは分かりませんが、 
私としては、ヘルメスがイリスにしごかれてるといいなあと思います! 
『ヘルメス、ふんどしを地面に付けないように走りなさい!!』的な忍者の修行でおなじみのヤツ!!(笑)あれやらされてたら可愛いんじゃないでしょうか!! 
 
(↑の会話文を書くにあたって、ヘルメス好きのお二人さんこと、星彦さん+黒川さんにご協力頂きました。ありがとうございます。) 
 
途中で話に出ている、アポロンが集団リンチ云々の話ですが、 
太古の昔、デルフォイはガイアとテミス二人の女神の神託所でした。 
 
そこにアポロンが新たな神託の神としてやってきた時、 
抵抗した
ガイア・テミス組 対 アポロンの神託対決が勃発。 
 
結果、アポロン不利で、ゼウスが助けに入り、 
 
ゼウス『私の息子の無礼はなんとか勘弁してもらえないだろうか!お前さん方二人は、私と一緒にドドナの神託所で祭らせてもらうから!!デルフォイはアポロンに譲ってやってくれ!!この通り!!』 
 
――で、丸く収まった、という神話です。 
この神話もさー!こんど死ぬほど脚色して書かせてもらいたいわ…!!だってエロイだろ…どう考えても!!アポロンが女にいいようにされてんだぞ!! 
 
(ちなみに、↑の会話文ではそこに夜の女神ニュクスも加えていますが、デルフォイではかつてニュクスの神託も行われていたので、アポロンリンチに加わってた可能性はあるかも…エロイ…と思って入れてしまいました。すみません。) 
 
 
――でもって、本題の
「9月23日は伝令デー」の話。 
 
 
紀元前490年9月、マラトンの戦いの折。 
ペルシア軍を相手にアテナイは大変な苦境に立たされており、 
救援を要請すためスパルタに伝令を飛ばすことに。 
 
で、その伝令の彼が…
アテナイからスパルタまでの山あり谷ありの260kmを一昼夜で走り切ったという… 
 
260kmを一晩…!!東京駅-名古屋間を一晩!!!ちょっとした新幹線かお前は!!って話だ! 
伝令スゲー!本当に過酷な仕事です! 
 
 
――でもって、その故事を記念して、ギリシャでは毎年9月下旬、全く同じコースを一昼夜で走り切る、世界一過酷なマラソン大会、
「スパルタスロン」が開かれております! 
 
 
 
――ちなみに、一晩でスパルタまで走り切った後はどうなったかというと、 
 
アテナイの伝令「偉大なるスパルタのお方がた、ギリシャで最も古きポリスであるアテナイが今、大変な苦境にあります。これはアテナイだけの問題ではない、ギリシャ全体の危機です。力を貸して頂きたい!!」 
 
スパルタ人「アテナイの伝令よ、月はまだ満ちてはいない。 
 
我々は、この時期の上弦の月から満月までの9日間は、絶対に軍を動かすことはできない。――これはアポロンとの古き契約なのだ。…だが、月が満ちた暁には、必ず駈けつける!」 
 
 
――世界で一番待ち遠しい満月だっただろう!!アテナイ人にとっては…!! 
そしてまたもギリシャ人の前に立ちはだかるアポロンの影…!!
 
ほんと罪深いわ…あの男は…!