―――――――――――――――――――――――――――
先日のニュース――・・・
「世界一好色だと思う国ランキング」…1位:ギリシャ
主な理由:ギリシャ神話には情愛をテーマにした話がたくさんあるから。
―――――――――――――――――――――――――――
まずはギリシャおめでとうだよ。
でもさ…そんなに世界中からギリシャ神話がエロいと思われてるんだったら、その中でも一番エロい神話って一体どれなんだ?!
そんなわけで、今夜決めようぜ!ギリシャ神話の中でどれが一番エロいのかを!!
●私が思う「エロス」の定義
…まず前提として、「エロスとは何か?」、「古代ギリシャ人自体のエロス観とは何か?」ってことを考えよう。
古代ギリシャ人なんてみんなの集まる広場のど真ん中でオナニーするのは当たり前、広場でセックスしてる人たちに対しては「ちょっと珍しい連中」くらいのトーンなのよ!そんなレベルの連中に、そもそも、「エロい」なんて観念が存在するのかよ!
そして私の方も、残念ながらエロスに対してギリシャ人ばりに耐性がついてしまっている…!
古代ギリシャの壷絵にはエロいのがたくさんあるわけですけど、乱交とか、獣姦とか、同性愛とか、ちんこの先にワイン注ぎこんでる絵を見ても、
私「先生、この絵ですけど…ギリシャ人は、男性器の先からお酒入れても平気なんですか?」
先生「いえ、死にますね。」
バカですよね…。「バカでしょ…?」――くらいのトーンなわけ!
「古代ギリシャ史専攻たるもの、ちんこに酒を突っ込む場面に遭遇しても動じてはならぬ」と。
そんな私なのですが…一つだけ、忘れられない壷絵がある。
一人の女の人が草原に立っている絵なんですけど、よく見るとその草が…全部男根なのよ…!もう見渡すかぎりの男根畑なの!男根の総決起集会が始まっちゃってるの!!
で、その男根畑で女の人が何をやってるかっていうと、…水をまいてる!すごい朗らかな顔で地面からニョキニョキ生えてる男根にお水をまいてる!!
私「…先生!この絵すごくないですか!?アイロニーが効いてるっていうか…エロい題材なのに、すごく綺麗というか…!」
先生「うん、むしろ哲学的ですらある!」
…それで私は思った。真のエロスというのは、グロテスクで直接的なものじゃなくて、美しい情景の中にほのめかされるものだ。
――この考えを踏まえて、独断と偏見で私が思うエロいギリシャ神話を2つほど挙げさせてもらいたい!
●その1:冥王ハーデスがペルセポネーを冥界にさらう神話で、別れ際に柘榴の実を食べさせるシーン
もー神話学のお偉いさんが「こ、このシーンはハーデスがペルセポネーにフェラチオを強要したことの暗喩だッ!!」と興奮する気持ちが本当にわかるわ。すごくエロい!
…まずさ、ハーデス様が彼女を地上からかっさらって来て冥界に閉じ込めてるから、もちろん地上と天界は大混乱なんですよね。
ゼウス「このままだとマジでマズイ。今すぐ冥界に行ってあのバカを止めてくれ。…頼んだぞ、ヘルメス」
とゼウスから丸投げされて、伝令神ヘルメスが冥界にやってきて、ハーデス様の寝室に踏み込むわけ!!ヘルメスすげェ!私だったら絶対イヤよ!セックスしてるって分かりきってる男の寝室に殴りこむなんてのは!
ヘルメス「ハーデス様!あんたもういい加減にしてくださいよ!!」
バーン!!…と、まあ寝室のドアを蹴破ると、案の定ベッドの上にハーデス様とペルセポネーが一緒に寝ている。が、ペルセフォネーの方はとにかくハーデスのことを激しく嫌がっている、というヘルメス視点の情景描写が入って、
ヘルメス「ハーデス様、彼女を離してください!ペルセポネー様の母君のデメテル様がもうカンカンです!!」
――ものすごい修羅場よ。
ベッドで女とニャンニャンしてるところを部下に殴りこまれたのよ?私がハーデスだったら、もう半ベソかきながら股間の部下ともども土下座だよ!
でも、実際のハーデス様はそうしなかった。
『しかし、冥王アイドネウス(ハーデス)は眉だけを上げて笑った。』
ハーデス「エクセオ、ペルセポネー、」
(帰るがいい、ペルセポネー、(母のもとに))
しゃべった…!!登場してからこの360行の間、一言もしゃべらなかったハーデス様がしゃべった…!ノッポさんがしゃべった!!くらいのトーンで驚きですが、
ハーデス「…エーリオン・エン・ステーテッシイ・メノス・カイ・トゥモン・エクーサ:
(でもその胸の中に私に対する優しさと情を持ってくれ、)
メーデ・ティ・ドゥオートゥマイネ・リエーン・ペリオーシオン・アローン」
(そして、どうかそんなにひどく悲しまないでほしい)
そして、そばにいるヘルメスの目を盗んで、
アウタル/ホ・ガウトス/ロイエース・ココン/エドーケ・パゲイン・
しかし/ハーデス自身は/柘榴の実の一粒を/(彼女に)食べさせた
メリエーデア / ラスレー
(その実は)甘美で/(その行為は)秘めやかだったのだ
――ああ、このシ−ンほんと男根の花畑でお水まいてる状態。
上手くいえませんが、本当に性的でエロくないですか?
しかもこのシーンで柘榴の粒を食べちゃったから、ペルセポネーはハーデスから離れられなくなっちゃってる。
それを考えると、ハーデスの言葉「そんなにひどく悲しまないで」は、「今までひどいことしてごめんね」よりも、「これからひどいこと(冥界から離れられなくなるように)するけど、許してほしい」という風にも取れる。
そして、柘榴の粒を食べさせるシーンは、元のギリシャ語読む限りでは、口移しで食べさせてるような感じもする。ヘルメスの目を盗んで食べさせてるなら、手で食べさせるよりキスするふりして口移しした方が上手くいきそうじゃない?
でもこのシーンが本当にフェラチオの暗喩だとしたらすごいよ。
ハーデス様、部下にベッドシーンを踏み込まれた挙句、全く動じることなくその目の前でフェラチオしてもらってんのよ!?
あんた金メダルだよ!!エロス界の金メダリストだよ!!
(こ
の神話全体を通して、ハーデスがペルセフォネーとセックスしてる、という直接的な表現は一つもない。でも、たくみにそれがほのめかされている。例えば、途
中まではペルセフォネーのことを「デメテルの娘」、「処女(おとめ)」と書いているのに、ある時点からは、「ハーデスの妃」という表現が使われるように
なってる。そういうほのめかしってすごくエロい。)
●その2:アテネ人によってもみ消された神話:「アポロンとアテナが夫婦」
普通にアテナに刺されちゃうんじゃないの?アポロン。
ギリシャ神話界一のプレイボーイ・アポロンと、神話界一身持ちの固い処女神・アテナが夫婦だとする神話が昔あったらしい。そしてこの二人の間に生まれたのが医神アスクレピオスだったらしい。
しかし、ある時点から、アテナの崇拝者(多分特にアテネ人)に「俺たちのアテナたんはセックスなどしない!」と否定され、この神話自体がもみ消されてしまった。
獣姦、乱交、男根にワインぶち込みはOKで、アテナがセックスするのはダメとな?どういう倫理観なんだそれは?
…もちろん、これは古い神話で、後の古代ギリシャ人によって隠された神話なので、詳しい内容は全然わかりません。
でも、想像するだけですごいドキドキしない!?
公共広場でオナニーOK・セックスOKで性に対する倫理観なんてほぼゼロのようなギリシャ人が、「アテナがセックスするシーンは耐えられない」なんてさ!
しかも、相手はあのアポロン!あのド変態アポロン!!
アテナなんてどうやって口説いたのよ!?
しかも、上手く事に持ち込めたところで、アテナって、
アテナ「アポロン。その股間にぶる下がっている.さやえんどう大のものが…まさか貴様の男根か?」
…くらいのこと言ってアポロンをドン凹みさせそうじゃない?
そう思うのはアテネの連中の「アテナたんはセックスなどしない!」理論に私が毒されているからでしょうか?
いや、でも待てよ…アポロンって、いつもけっこう強引に事におよぶじゃない?
とすると、アポロンがアテナに、こう、強引に…
イヤ、でもそんなアテナにのしかかった時点で男根ねじ切られるよ。
絶対アポロンよりアテナの方が強いもん!
むしろ、持ってきた性具で逆にケツを掘られそうになって、あわてて逃げ帰ってくアポロンの背中に、「忘れもんだコノヤロウ!!」っつってその性具を叩きつける!ってかんじ!アテナは!
――と、こんなふうに想像するだけで面白い!
ぜったい似合わないカップルだから、もう想像するだけでエロいよ!ああ!本当に、その神話はどんな内容だったんだろうなあ!もう永遠に読めないだろうけど、だからこそ暴いてみたくもなるよ!!
たとえばこんな感じとか?
アポロン「なあアテナ、まだ寝ないのか?…って、今度は一体何を作ってるんだ?」
アテナ「ん?いや、私の槍にな、毒を塗って攻撃力を上げようと思ってるんだ。――今、その毒を作ってる最中だ、話しかけないでくれ」
アポロン「君の槍は軽く刺しただけで地球が滅ぶレベルだからもうカスタマイズはいいんじゃないだろうか。そんなことより、アテナ――」
アテナ「うーん。ヒュドラの毒とピュトンの毒を混ぜた方がいいかな?それともこっちの毒を…」
アポロン「アテナ!そんな物騒なものより、もっといいものを混ぜよう。」
アテナ「え?」
アポロン「今から、ベッドの上で――私の水と君の水を混ぜよう。アテナ。」
うわあああああ俺のアテナたんはセックスなどしないーー!!
…本当、そう言うアテネ人の気持ちが分かるわ!!
やっぱり、崇拝する女性には処女でいてほしいものかも。
●まとめ
…と、いうことで、色々話が脱線してしまいましたが、私が一番印象に残っていて、「エロい!でも美しい!」と感じるような神話は上の二つでした。
まあ、アポロンが出てくる神話って基本的にエロイですよね。あの人は歩くエロスだよ!
ダフネーとお花畑で追いかけっこしたり、死んで花になったヒュアキントスに口づけたり…っていうシーンは、めまいがするほど美しいしエロかった。
逆に、ちょっとこのシーン、エログロだなあ…と思うような神話で印象に残ってるのは、ゼウスが蛇に変身してペルセポネーと交わる(そして、そこから酒神ディオニュソスが生まれる)神話です。獣姦だし、ゼウスとペルセポネーって実の父娘だからすごい近親相姦だし、それ以前に強姦だし、もっとそれ以前に人妻じゃないの?ハーデス様の。っていう…。
なんでしょうね?同じ変身モノでも、ゼウスが黄金の雨になってダナエと交わるシーンは美しかったのに。
――ってかこういうのはただの好みですよね。
神話にくわしい他の人に聞いたら、「アンドロメダが素っ裸で鎖につながれてるシーンがいい」とか、「プロメテウスが鎖につながれてもだえてるシーンが好き」とか、いろんな答えが返ってきた。
…そうだ、鎖につながれて…で思い出したけど、私はアポロンがゼウスに神性を取り上げられて人間の奴隷になっちゃうシーンがすごくエロくて好きだった!
だってあのプライドの高いアポロンが…!鎖につながれて、人間の奴隷になっちゃうのよ…!!すごいエロいよ!!
――え〜ということで、今回独断と偏見ながらも、一番エロいギリシャ神話について考えてみて分かったこと。
自分がエロいと思う神話には、自分の性癖がにじみ出る。
みなさんは、どんな神話がエロいと思いますか?
|