家庭の事情:その1 〜レト家の場合〜 
 
   
 
アポロン「…私、もういいや…ご馳走さま…」 
 
レト「あっ、アポロン!またキュウリ残して!だめじゃない、ちゃんと食べなきゃ!」 
 
アポロン
「嫌だ。こんなもんは鈴虫の食うもんだ!!もう、いつまでも子供扱いしないで下さい、母さん!」 
 
レト
「あなたはどうしてそういつも反抗的なの!お隣のヘルメス君はもっと良い子にしてますよ!」 
 
アポロン
「はぁ!?ヘルメス!?アイツ全然いい子にしてないよ!この前だって親に隠れてエロ本読んでたぞ!!」 
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 
――家族が全員女、しかも
処女神が与党というこの最悪の家族構成で、果たしてアポロンはうまくやっていけてるんだろうか…。 
おそらく世界最高レベルのガールズトークに全く入っていけてないんじゃないか!?―― 
 
アパイア「アルテミスお姉さま、ちょっと胸大きくなってません?」 
 
アルテミス「…そうかしら。でも、ヘカテー叔母さんの方が全然大きいわよ。」 
 
ヘカテー「そんなことないよ。同じくらいだって。どれ?ちょっと触らせて」 
 
アルテミス「ちょっと叔母さま!揉まないで!ふふ、くすぐったいわー!」 
 
 
アポロン「………。」 
 
 
でもいつも他の連中から「お前の家族、姉ちゃんも妹も叔母さんも母さんも美人で羨ましいぜー!なんかエロ本の設定に出てきそうなハーレム環境だよな!エローい!」とか言われて「全然そんなことない!!実際私の立場になってみろ!!地獄だぞ!!」 
 
って怒ってそうじゃないか!アポロン!? 
 
 
――ちなみに、一般的に「レトの子ら」はアポロンとアルテミスだけですが、 
今回はせっかくなので、「そこにアパイアも含まれる」というアイギナ島の地方神話を採用しました。 
 
アパイアは
「見えない光」の女神で、アイギナ島でしか信仰されていない女神。 
つまり正直パッとしない無名の女神ですが、実はある点でアテナとポセイドンに匹敵するレベルの重要性をもっていたのだ!! 
 
というのも、古代で夜にエーゲ海の上からギリシャ本土を見ると! 
アテネのパルテノン神殿、スニオン岬のポセイドン神殿、そしてアイギナ島のアパイア神殿の明かりが
三角形を描くように配置されてて、船乗りたちの目印になっていたという…あー見てみたいね!!そんな光景!! 
 
そしてマンガの中のアパイアの言葉、
「クレタ島の変な男に9か月間も追いまわされた」…この「変な男」とは冥界の裁判官・ミノスのことです。こんなのがヘカテー姐さんにバレたら逆さ吊りにされそうだが、 
 
それじゃあ次にこのミノスの家庭の話を。 
 
 
家庭の事情:2〜ミノス家の場合〜 
 
   
 
ミノス「あんなショボイ男がこの俺の娘のムコだなんて絶ぇえええーーっ対許さん!!」 
 
ラダマンテュス「…しかし兄上…相手は
酒神ディオニュソス。不完全ながら、一応神ですよ。敵に回すと後々どんなしっぺ返しが来るか…」 
 
ミノス「ラダマンテュス!
俺はかつてあの海神ポセイドンを何度も敵に回した!だがどうだ、俺を見てみろ!ピンピンしてるだろうが!!」 
 
ラダマンテュス
「してません。我々はもう死んでます。」 
 
ミノス「とにかく嫌なものは嫌なのだ!!
いいか、この俺はな!かつて世界で初めて海軍を組織し!その軍事力でポセイドンをも脅かした男だ!!俺自身も『弓を射る姿はアポロンのごとし』とよく謳われたもんだ!! 
 
その勇敢で雄々しいこの俺に!この偉大な俺の娘のムコにだ!! 
あんな剣も持ったことがない、ロバにも乗れない女々しい馬の骨が来るなんて死んでも許さんッ!!」
 
 
 
みんな
「「「だからお前はもう死んでるんだって!!」」」 
 
 
タナトス「だいたいディオニュソスはペルセポネー様の養い子!だから、ハーデス様もあいつのことは目にかけておられる。いくらショボイからって手荒なマネは許さんぞ!」 
 
ミノス
「黙れ死神ごときが!!前々から貴様ら神には言いたいことがあったのだ!いいか、俺はミノア人だ!ギリシャ人ではない!!だから貴様らギリシャの神どもに仕える筋合いはこれっぽっちも無いわ!!分かったら口を出すな死神風情が!!」 
 
タナトス「う、うわ〜〜ん!ハーデス様ぁああ〜〜!!」 
 
 
ハーデス
(…誰でもいいから…仕事してくれ……) 
 
 
 
――多分ミノスとディオニュソスはタイプが全く違うので、婿・舅同士としては上手く行かないだろうなあ、と! 
ミノスはもちろんミノア人で、ギリシャ人じゃないから、「ギリシャ人」が語る「ギリシャ神話」の中では悪者として書かれがちですが、それでもミノスは相当カッコ良く見える!! 
 
強くて雄々しくて、自信家でさ! 
彼が烈火のごとく怒ったら、もうギリシャのどの都市も逆らえなかった。 
 
そして
ミノスに屈しなかったのはただ一人、アイアコスだけ!という! 
この構図も
「ギリシャ人の代表=アイアコス」と、「異民族の代表=ミノス」の対立のイメージで本当に面白いですね!! 
 
そして、その対立してた二人が今では冥界で仲良く裁判官やってる、という…この流れ!最高だろ!! 
 
この二人を裁判官に選ぶとは、 
ハーデス様の人材採用の目は確かだったと思う!! 
やっぱりいつも人間を裁いてるから人を見る目はあるとみた! 
 
多分当時世界で最も「いい男」だったはずだ!! 
アイアコスとミノスは!!
 
 
…と、話の流れがいつも通りのハーデス讃歌になってきたので、 
 
最後にハーデス様が息子のようにかわいがってるであろう、甥っ子の話を。 
 
 
家庭の事情:3〜アレスの場合〜 
 
   
 
 
…アレスはゼウスとヘラの子、の他に
クロノスとヘラの子、というバージョンがあるので絡めてみました。 
本当にクロノスとヘラの子だったら、ゼウスの言葉
「アレス、私はお前が神々の中で一番嫌いだ。」も、そりゃあそうだろうな、と納得できちゃうな。 
 
アレスは複雑な家庭環境ですが、それと同じくらいかそれ以上にブッ飛んでる環境のハーデス様からしたら、放っておけない甥っ子なんだろうなあ!きっと!! 
 
そして、ちょっとアポロンに話を戻すと、 
 
「あのアレスでさえ、戦いを忘れ、アポロンの琴の音色に聞き惚れる。」とか、「あのアレスも槍や血よりもアポロンの歌を好む。」という文句があるが、こんなのアポロンからしたら最高の褒め言葉だろ!! 
 
どんな美辞麗句を並べられるより、アレスに 
「アポロン、この前の歌の続き聞かせてくれ!気になって眠れねえよ!」とか、「なあ、さっきの歌、もう一回聞かせてくれ!!」とか目をキラキラさせて来てくれた方が、アポロンは嬉しいんじゃないか!! 
 
アポロン
「…アレス、私は貴様のiPodでも何でもないのだ。貴様にしょっちゅう歌ってやるほど私もヒマではない。」 
 
…とかなんとか言いつつ、 
アレスが大好きな歌を聞かせてあげちゃう。 
そんな二人が理想です!! 
 
 
そして、アフロディーテからは 
 
アフロディーテ「…アレス?私を置いてどこに行くつもりなの?」 
 
アレス「アポロンのとこ。アイツの歌の続きがどうしても聞きたいんだ」 
 
アフロディーテ
「は?アポロン?何よ、貴方あんなひねくれ男の歌なんて聞きたいの!?あんなねじれ放題ねじくれて砂糖がかかったパンみたいな男の歌が私といるよりもいいって言うの!?」 
 
アレス「…アフロディーテ」 
 
アフロディーテ「…歌が聴きたいなら…あなたの耳元で、私が朝までずっと歌ってあげるわ」 
 
アレス
「……悪いけど…お前の歌とアポロンの歌とじゃ全然比較にならないよ。」 
 
 
――つってアフロディーテにバリバリ引っ掻かれてて欲しいね!アレス!! 
 
 
そしてアフロディーテも同じ人妻仲間のペルセポネーに、 
 
アフロディーテ
「ちょっと聞いてよ、ペルセポネー!!アレスったら私よりアポロンの方がいいって言うのよ!!浮気よ!完っ全に浮気だわ!!今度こそ別れてやるわーっ!うわーーん!!」 
 
ペルセポネー「…アフロディーテ、落ち着いて…」 
 
アフロディーテ「私、さんざんアレスに尽くしてあげたのよ!!アレスの●●●を×××してあげたり!!アレスの出した△△△を■■■してあげたり!!」 
 
ペルセポネー「えっ!!?」 
 
アフロディーテ
「ハーデスだってあんたに俺の○○を××して欲しいとか言ってくるでしょ!?」 
 
 
――そんな話になって、 
 
ペルセポネー「…(私、ハーデスに○○を××して欲しいとは一度も言われたことないわ…やっぱり私…愛されてないのかも…)」 
 
で、冥界に帰ってから 
 
ペルセポネー
「…ねえ、ハーデス。私、あなたの○○を××してもいい?」 
 
 
…つってハーデスを鼻血の海に沈めるペルセポネー。 
そんな二人が理想です!! 
 
 
――と、なんだか久しぶりにギリシャ神話の話がたっぷりできて楽しかったです! 





<神話まんが ×3> 家庭の事情。(2009年11月23日の日記)より抜粋。